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Inner(Deep Muscles / Local System)- GIFTメソッドの4つの原因分析のひとつ。深層筋のタイミングとキャパシティを回復させるアプローチ

Inner(インナー機能不全)深層筋が働かない原因・症状・giversの施術アプローチ

インナー機能不全とは?

インナー機能不全とは、深層筋(インナーマッスル)が必要な場面で・必要なタイミングで・必要な強さで働けず、姿勢保持(静的)と動作中の安定化(動的)が崩れやすくなる状態です。GIFTメソッドの「I」にあたり、施術で作った変化(痛み・可動域・滑走フォーム)を"戻りにくい状態"に固定化するプロセスとして位置づけられています。

ポイントは「筋力が強い・弱い」ではなく、神経制御(タイミング)と持久性(支え続ける能力)の2軸。giversが特に重視するのは腸腰筋(骨盤と背骨をつなぐ深層筋)と腹横筋(お腹を内側から支えるコルセット筋)です。

監修:安藝泰弘(修士〈スポーツ健康科学〉/株式会社givers代表取締役CEO/PLOS ONE掲載研究者)

I = インナー
(Deep Muscles / Local System)とは

I = インナー(Deep Muscles / Local System)とは、一般にインナーマッスルと呼ばれる深層筋(Deep Muscles)、および関節の安定性を担うローカル筋へのアプローチです。これらの筋が、必要な場面で・必要なタイミングで・必要な強さ/持続で働けず、姿勢保持(静的)と動作中の安定化(動的)が崩れやすくなる状態を「インナー機能不全」と呼びます。

ポイントは「筋力が強い/弱い」だけではなく、
神経制御(タイミング)と持久性(支え続ける能力)です。

アウター(動かす筋)とインナー(支える筋)の役割比較:アウターは大きな力を発揮する表面の筋肉、インナーは関節を安定させる深層の筋肉

giversメソッドの「インナー」は、施術で作った変化(痛み・可動域・滑走・フォーム)を"戻りにくい状態"に固定化する工程として位置づけます。インナーがフォーム(F)の安定装置として働くほど、代償が減り、結果としてトリガーポイント(T)滑走障害(G)に発展しにくい身体条件が整います。

要点(まずここだけ)

  • インナーは「施術効果を維持するための"固定化プロセス"
  • インナーは"最大筋力"より、タイミング(予測的な安定化)×持久性(支え続ける能力)が重要
  • giversが最重要インナーとして重視するのは 腸腰筋(ちょうようきん:骨盤と背骨をつなぐ深層筋)と 腹横筋(ふくおうきん:お腹を内側から支えるコルセット筋)
  • 自分で動かす運動でも改善可能だが、うまくスイッチが入らない人にはEMS(電気で筋肉を刺激する機器)を"起動補助"として推奨(ただし安全管理が前提)

こんなサインがあると
「インナー」が関与しているかもしれません

  • 立っているときや歩くとき、骨盤が左右や前後にブレやすい
  • スクワットや前屈で、腰が先に反る・お腹の力が抜ける・肋骨が開く
  • 股関節を動かしたいのに腰が動いてしまう(股関節の動きが"腰に逃げる"
  • 施術直後は良いが、数日でフォームが戻って痛みや張りが再燃する
  • 表面の筋肉(背中やもも前)が硬くなりやすく、深層が働いている感じがしない

これらのサインは、腰痛が繰り返す方や、肩こりが慢性化している方に多く見られるパターンです。

インナー機能不全のセルフチェック動作:骨盤ブレ・肋骨開き・腰の代償が出やすいスクワットや片脚立ちの様子

なぜインナーが働かなくなるのか:
2つのロック

臨床でブレないように、giversではインナー不全を 「タイミング」「キャパシティ(支える能力)」 の2系統で整理します。

概念モデル:安定性 ≒ タイミング(いつ入るか) × キャパシティ(どれだけ支えられるか)
どちらかが落ちると"安定"は成立しません。

Timing Lock(神経制御の遅れ・ズレ)とCapacity Lock(支える力・持久性の不足)の2軸で整理するインナー機能不全の概念図
01

Timing Lock(タイミングロック)

神経制御の遅れ・ズレ

定義

動作の前(または動作中の要所)で入ってほしい安定化が入らず、関節が"遊ぶ"ことで、表面の筋肉(代償筋)が先に働いてしまう状態。

たとえば、腹横筋は腕や脚を動かす前に自動的に働き、体幹を安定させる役割があります。これを「フィードフォワード(予測的)」な活動と呼びます。腰痛のある人では、このタイミングが遅れるという報告があります(ただし、すべての人に当てはまるわけではなく、パターンは多様です)。

Timing Lock(タイミングロック)のイメージ:インナーが入るべき時に入らず、表面の筋肉が先に過活動を起こしている状態の図解

身体で起きること

タイミングがズレる → 表面の筋肉が頑張りすぎる(過緊張) → トリガーポイント(T)が出やすい → 局所の圧が上がりやすい → 滑走(G)が落ちやすい、という連鎖が起こり得ます(確立した因果というより、臨床仮説として扱います)。

介入の狙い

"スイッチを入れる"。小さく正確にインナーが入り、動作につなげられる状態を作ります。

02

Capacity Lock(キャパシティロック)

支える力・持久性の不足

定義

入るべき時に入っても、支え続けるだけの持久性・筋肉の厚み・協調が足りず、すぐ崩れてしまう状態。

背骨の安定は、骨・靭帯などの受け身の構造だけでなく、筋肉(能動的に動く部分)と神経制御が協調する"システム"として働いています。キャパシティが不足すると、タイミングが良くても最後は崩れてしまいます。

Capacity Lock(キャパシティロック)のイメージ:インナーが入っても支え続ける持久性が不足し、後半でフォームが崩れてしまう状態の図解

giversが重視する2つの筋肉:腹横筋 × 腸腰筋

腹横筋(ふくおうきん)

お腹の一番深い層にあり、天然のコルセットのように体幹を内側から支えます。体幹の安定化で中心的に議論される筋肉です。

腸腰筋(ちょうようきん)

背骨と骨盤、そして太ももをつなぐ深層筋。股関節を曲げる主力でありながら、腰椎にも付着しており、安定化にも関与し得るとされます。ただし"安定筋か否か"は議論があり、だからこそ評価が必要です。

骨盤帯の安定は、筋肉が協調して働くことで関節の"締まり"が良くなる(力の閉鎖)という枠組みでも議論されます。一方で、単純化しすぎない視点も大切です。

腹横筋と腸腰筋の位置:腹横筋はお腹の最深層に、腸腰筋は背骨前面から骨盤を通り太もも上部に付着する深層筋

介入の狙い

"支え続けられる身体"にするフォーム(F)が崩れない土台を作ります。

Timing LockとCapacity Lockはどう関係する?

Timing Lock(タイミングの崩れ)とCapacity Lock(持久性の不足)が相互に悪化し合うサイクルの図解

Timing(タイミング)が崩れると、表面の筋肉が代償して疲れ、Capacity(支える能力)まで落ちやすくなります。

逆にCapacityが弱いと、脳は「守るために」表面優位のパターンに寄せ、タイミングの精度も荒れやすくなります。

つまり 相互に悪化し合う ので、giversでは「起動(タイミング)」と「定着(キャパシティ)」をセットで扱います。

Timing LockとCapacity Lockの比較

Timing Lock(タイミングロック)とCapacity Lock(キャパシティロック)の比較表
項目 ① Timing Lock(タイミング) ② Capacity Lock(キャパシティ)
主な問題 入るのが遅い/ズレる すぐ崩れる/保てない
体感 "使えてない感じ" "すぐ疲れる・持たない"
代償パターン 表面の筋肉が過活動になりやすい フォームが後半で崩れる
介入の第一手 スイッチ(起動) 支え続ける(定着)

なぜ"骨盤帯のインナー"が全身に響くのか
(フォーム/トリガー/滑走への波及)

体幹(土台)が不安定だと手足に余計な筋緊張が生じ、フォームが崩れる連鎖のイメージ図

体幹は「手足のための土台」です。土台が不安定だと、手足は力を出すために余計な筋緊張を必要とし、フォームが崩れます。

結果として、トリガーポイント(T)滑走の破綻(G)が起きやすい条件になります。

この「土台の安定 → 手足がスムーズに動く」という考え方は、体幹トレーニングの分野でも繰り返し言及されています。腰痛や肩こりが繰り返す場合、この土台の不安定さ(インナー機能不全)が根本原因の一つである可能性があります。

giversメソッド:評価→介入→再評価

giversメソッドの4ステップフロー図:①動作評価→②局所評価→③起動+定着→④再評価のサイクル
1

動作評価(フォームとセットで見る)

  • 歩行、片脚立ち、しゃがみ、前屈、段差昇降
  • 「股関節の動きが腰に逃げる」「肋骨が開く」「骨盤がブレる」を観察
2

局所評価(インナーの仮説を立てる)

  • 腹横筋の起動:ドローイン(お腹を薄くへこませる動き)や呼吸で"薄く締まる"反応を見る
  • 骨盤帯のコントロール:脚上げテストなどで"支えの入り方"を確認
  • 腸腰筋:股関節を曲げる時の骨盤制御、腰の反り方、代償(もも前が優位になるなど)をチェック
3

介入(起動→定着)

  • 起動(タイミング):呼吸・お腹の圧・骨盤のニュートラル学習 → 小さな運動で"先に入る"を作る
  • 定着(キャパシティ):保持系(短い時間で質高く)→ 動作へ統合(スクワット/歩行/段差)

EMSの位置づけ(givers推奨の理由)

EMSの位置づけ:「起動補助」として深層筋のスイッチを入れるために使用し、運動の代替ではないことを示す図解

EMS(電気で筋肉を刺激する機器)は、自分の意思だけでは動かしにくい深層の筋肉を動員できるという点で、インナーの"起動補助"として相性が良いです。

研究では、お腹へのEMSで腹筋群のサイズが変化した報告や、運動にEMSを上乗せした効果を検証した研究もあります。

ただし重要なのは、EMSは運動の代替ではないという点です。EMSは便利ですが、運動そのものが持つ心肺機能・血管・協調性などへの効果は置き換えにくいとされています。

4

再評価(同じ動作で確認)

脚上げテスト、片脚立ち、しゃがみ、歩行で「骨盤のブレ」「肋骨の開き」「腰の代償」「主観の安定感」がどう変わったかをその場で確認

EMS運用の安全メモ(重要)

EMSは"効く"分だけ、やり方を間違えるとリスクがある領域です。

  • 商業用のEMS(全身型)では、安全指針(段階的に負荷を上げる、事前スクリーニング等)をまとめた国際ガイダンスが出ています
  • 高強度で急にやりすぎると、まれに筋肉へのダメージ(横紋筋融解症など)が報告されています
  • 妊娠中、ペースメーカーなど体内に機器がある方、血栓がある方、皮膚に問題がある方、感覚障害がある方などは禁忌・注意の対象です

giversとしては、「低〜中強度から開始 → 少しずつ上げる → 運動へ統合」を基本にし、目的が"筋肥大"なのか"起動"なのかを分けて設計するのが安全です。

本ページの監修

安藝 泰弘修士(スポーツ健康科学)

株式会社givers 代表取締役CEO

東亜大学大学院にて修士号取得。肩甲骨の非対称性と肩こりの関係に関する研究でPLOS ONE(国際学術誌)に論文を掲載。全国160院以上・累計85万件以上の施術実績を持つgiversこころ整体院グループを統括。

インナー機能不全(Inner)に関するよくある質問

Q

インナーは「ドローイン(お腹をへこませる)」だけで鍛えられますか?

A

ドローインは起動のきっかけとしては有効ですが、それだけでは不十分です。最終的には歩行やしゃがみなどの実際の動作の中で「先に入る→保てる」へつなげないと、フォーム(F)は戻りやすくなります。giversでは動きの中で再学習することを重視しています。

Q

腸腰筋は硬くなるから鍛えない方が良いですか?

A

「硬い=悪」ではなく、必要な可動と必要な安定の両立がテーマです。腸腰筋は安定化への関与が議論される筋なので、giversでは「その人に必要かどうか」を評価した上で取り入れます。硬さが問題なのか、使えていないことが問題なのかを見極めることが大切です。

Q

EMSだけでインナーは改善しますか?

A

EMSだけでの改善は推奨していません。EMSには深層筋を動員できるという利点がありますが、運動が持つ広い効果(協調性、持久性、呼吸、心肺機能など)は置き換えにくいとされています。giversではEMSを「起動補助・上乗せ」として位置づけ、必ず運動との組み合わせで使用します。なお、妊娠中やペースメーカー使用者など禁忌対象の方もいるため、事前スクリーニングが必須です。

Q

インナーを改善すると他のGIFT要素(T・G・F)にも効果がありますか?

A

インナーが適切に働くと、表面の筋肉の過活動(力み)が減りやすくなります。その結果、局所の圧が悪化しにくくなるため、トリガーポイント(T)滑走障害(G)の「発生条件」を作りにくくなります。またインナーがフォーム(F)の安定装置として機能するため、姿勢の崩れも起きにくくなります。

Q

インナー機能不全はどのような症状と関連がありますか?

A

インナー機能不全は、腰痛(特に繰り返す慢性腰痛)、骨盤の不安定感、姿勢の崩れ(猫背・反り腰)、肩こり、膝の痛みなどの背景因子として関与し得ます。「施術直後は良いが数日で戻る」というパターンは、インナーの固定化不足が原因の一つとして考えられます。

注意が必要な症状

強いしびれの進行、筋力低下、膀胱・直腸の障害、外傷後の著しい腫れや熱感、発熱、夜間痛の増悪などがある場合は、別の要因が関与している可能性があります。

またEMSは禁忌・注意事項があるため、既往歴や体内機器の有無などのスクリーニングは必須です。無理をせず、必要に応じて医療機関へ相談してください。

参考文献

  1. Panjabi MM. The stabilizing system of the spine. Part I. J Spinal Disord. 1992.
  2. Hodges PW, Richardson CA. Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. Spine. 1996.
  3. Maffiuletti NA. Physiological and methodological considerations for the use of NMES. Eur J Appl Physiol. 2010.
  4. van Dieën JH, et al. Motor Control Changes in Low Back Pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2019.
  5. Penning L. Psoas muscle and lumbar spine stability: a concept uniting existing controversies. Eur Spine J. 2000.
  6. van Wingerden JP, et al. Stabilization of the sacroiliac joint in vivo. Clin Biomech. 2004.
  7. Gnat R, et al. The influence of simulated transversus abdominis muscle force on SIJ stiffness. J Biomech. 2015.
  8. Kemmler W, et al. WB-EMS meta-analysis. Front Physiol. 2021.
  9. Kemmler W, et al. Position statement and updated international guideline for WB-EMS. Front Physiol. 2023.
  10. Macedo LG, et al. Motor Control Exercise for Persistent Nonspecific Low Back Pain. Phys Ther. 2009.

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