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Gliding(Tissue Gliding / 組織間滑走性)- GIFTメソッドの4つの原因分析のひとつ。癒着した筋膜や組織間の滑走性を回復させるアプローチ

Gliding(組織間滑走性)滑走障害とは?原因・症状・giversの施術アプローチ

滑走障害(組織間滑走性の低下)とは?

滑走障害とは、筋肉・筋膜・腱・神経などの「層(レイヤー)」が、動作中に本来必要なだけ相対的に滑れなくなり、引っかかり・詰まり・可動域のロス・痛みの誘発が起こりやすくなる状態です。GIFTメソッドの4つの原因分析(G・I・F・T)の「G」にあたり、肩こりや腰痛が「すぐ戻る」原因の一つとして注目されています。

原因は大きくPhysical Lock(物理的ロック:圧の増大)Chemical Lock(化学的ロック:潤滑/粘性の変化)の2系統に分類されます。giversでは「動作評価→局所評価→徒手+運動→再評価」の4ステップで、「その場の変化」と「戻りにくさ」を両立させる施術を行っています。

監修:安藝泰弘(修士〈スポーツ健康科学〉/株式会社givers代表取締役CEO/PLOS ONE掲載研究者)

G = Gliding
(Tissue Gliding / 組織間滑走性)とは

G = Gliding(Tissue Gliding / 組織間滑走性)とは、癒着した筋膜や組織間の滑走性(Gliding property)を回復させ、スムーズな可動域を取り戻すアプローチです。筋肉・筋膜・腱・神経などの"層(レイヤー)"が、動作中に本来必要なだけ相対的に滑れなくなり、引っかかり・詰まり・可動域のロス・痛みの誘発が起こりやすくなる状態を「滑走障害」と呼びます。

大事なのは「硬いか柔らかいか」より、
"必要な動きの場面で、必要な方向に、必要なだけ滑れるか"です。

正常な滑走と滑走障害の比較:正常な状態では組織の各層がスムーズに滑走し、滑走障害の状態では層間の滑りが悪くなり引っかかりが生じている図解

要点(まずここだけ)

  • 滑走障害は、動作の質(動き方)を崩し、代償動作を増やします
  • 原因は大きく「圧(押し付け)」「潤滑/粘性(滑りやすさ)」の2系統で整理できます
  • giversメソッドは、動作評価→徒手→運動→再評価で「その場の変化」と「戻りにくさ」を両立させます

こんなサインがあると
滑走障害が関与しているかもしれません

ストレッチで伸びる前に"抵抗"が出る/動き出しだけ硬い/同じ角度で引っかかる/痛い場所をかばって別の場所がつらくなってきた——。

こうした反応は、単なる柔軟性不足よりも「層間の滑り」が落ちている時に出やすい体感です。肩こりや腰痛が繰り返す方は、滑走障害が背景にある可能性があります。

滑走障害のセルフチェック例:腕を上げる動作で特定の角度に引っかかりを感じている様子

なぜ滑りが悪くなるのか:2つのロック

生体の滑走は、乾いた摩擦だけで決まるわけではなく、潤滑・水分・粘弾性など複数の要因が絡みます。とはいえ臨床では、抵抗(滑りにくさ)を「圧」「潤滑/粘性」の2軸で整理すると、評価と介入がブレにくくなります。

概念モデル:摩擦の式 F = μN(F:抵抗、μ:滑りにくさ、N:押し付け)

Physical Lock(物理的ロック:圧の増大)とChemical Lock(化学的ロック:潤滑/粘性の変化)の2つの原因を示す概念図
01

Physical Lock(物理的ロック)

圧の増大

定義

筋内圧(筋肉内部の圧力)の上昇などにより、組織間の"押し付け"が増え、潤滑が保たれていても滑走が制限される状態。

筋は収縮に伴って内部の圧力が上がり、力を入れ続けると圧も比例して高まる、と報告されています。圧が高い部位では血流が先に障害され得る、という仮説も示されています。

臨床では、過緊張(力み)・筋スパズム・局所の膨隆・筋膜境界の柔軟性低下などが重なると、圧の逃げ場が減って"中がパンパン"になり、層同士の相対運動が起きにくくなります。

Physical Lock(物理的ロック)のイメージ:筋内圧が上昇し、組織間の押し付けが増え、層同士が滑れなくなっている状態の図解

さらに、圧が上がるほど筋の微小循環が低下し、酸素や代謝環境が悪化することが研究で示されています。日常の滑走障害はそこまで極端ではありませんが、「圧が上がるほど循環・代謝環境が不利になり得る」という方向性は重要な手がかりです。

介入の狙い

まず"圧を下げる・逃がす"。必要に応じて局所の過緊張を落とし、呼吸や体幹の使い方も含めて「力みの入る動き」を作り替えます。

02

Chemical Lock(化学的ロック)

潤滑/粘性の増大

定義

筋膜の層間で、ヒアルロン酸(体内の潤滑成分)を含む組織の性状が変化し、粘性が高まり、滑走が損なわれる状態。

Chemical Lock(化学的ロック)のイメージ:ヒアルロン酸の粘性が高まり、筋膜層間のサラサラだった潤滑液がベタベタに変化している状態の図解

深筋膜の層間にはヒアルロン酸が存在し、隣り合う線維性層が自由に滑ることを助ける、と報告されています。またヒアルロン酸が"より詰まった構造"になったり、組織の密度が変わると、深筋膜と筋の動きが損なわれ得る、という見立ても示されています。

ヒアルロン酸は高分子で、水を多く含む粘弾性の材料です。濃度や分子量、炎症などによる変化が、滑走に影響し得ると整理されています。さらに「densification(高粘性化)」として、ヒアルロン酸の凝集と水分保持能の低下により組織が高粘性化した状態が説明されています。

不動(動かさない状態)が続くと、筋組織でのヒアルロン酸が増えることが報告されており、「動かない→材料環境が変わる→さらに動きづらい」という悪循環が起こり得ます。

介入の狙い

"滑走環境を整える"。徒手でせん断(横ずらしの力)を作り、温度・水和・動き(適切な反復)で「滑る状態」を再獲得し、運動で固定化します。

Physical LockとChemical Lockはどう関係する?

Physical Lock(圧の増大)とChemical Lock(粘性変化)が相互に増悪し合う悪循環サイクルの図解

Physical(圧)が長引くと循環・代謝環境が不利になり得る一方、Chemical(粘性/密度変化)は滑走そのものをベタつかせます。両者は独立というより、相互に増悪し合う可能性があります。

ここは"確立した因果"として断言するより、圧と循環・代謝の関係を踏まえた臨床仮説として扱うのが安全です。また筋痛やトリガーポイント領域は、用語や病態仮説が一枚岩ではない点も押さえておく必要があります。

Physical LockとChemical Lockの比較

Physical Lock(物理的ロック)とChemical Lock(化学的ロック)の比較表
項目 ① Physical Lock(物理的ロック) ② Chemical Lock(化学的ロック)
主変数 圧(押し付け) 潤滑/粘性
体感 深い張り・動かすほど抵抗 ベタつき・こわばり
背景 過緊張・反復負荷・腫脹 不動・循環低下・組織環境変化
介入の第一手 圧を下げる/逃がす 滑走環境を整える

なぜ局所の滑走障害が全身に響くのか
(運動連鎖の視点)

運動連鎖の概念図:一箇所の滑走障害が結合組織のネットワークを通じて別の部位に波及し、代償動作が生じるプロセスの図解

身体は"部品の集合"ではなく、結合組織でつながったシステムです。

筋は単体で働くというより、周囲の結合組織を介した力の伝達が動きに影響し得ることが示されています。

つまり、ある層の滑走が落ちると、その場の可動域だけでなく、力の伝わり方や姿勢制御が変化し、別の部位に代償が出ることがあります。これが、肩こりの原因が肩ではなく別の箇所にあったり、腰痛の真因が姿勢(フォーム不全)にある場合のメカニズムの一つです。

giversメソッド:評価→介入→再評価

giversメソッドの4ステップフロー図:①動作評価→②局所評価→③徒手+運動→④再評価のサイクル
1

動作評価

歩行、しゃがみ、腕上げなどで、引っかかりが出る角度・方向・タイミングを特定

2

局所評価

滑走が破綻している層(筋・筋膜・神経周囲など)と、影響する運動連鎖を推定

3

徒手+運動

徒手で滑走を作り、運動で再学習して"戻り"を減らす

4

再評価

同じ動作で変化を確認し、最短ルートに調整

「気持ちいい」より「動きが変わる」
その場で変化を確認し、再現性を高めます。

施術前後の可動域変化:滑走障害へのアプローチにより腕の挙上角度が改善した例

本ページの監修

安藝 泰弘修士(スポーツ健康科学)

株式会社givers 代表取締役CEO

東亜大学大学院にて修士号取得。肩甲骨の非対称性と肩こりの関係に関する研究でPLOS ONE(国際学術誌)に論文を掲載。全国160院以上・累計85万件以上の施術実績を持つgiversこころ整体院グループを統括。

滑走障害(Gliding)に関するよくある質問

Q

滑走障害は"癒着"と同じですか?

A

いわゆる癒着(強い線維化)とは区別されます。癒着が組織が物理的にくっついた状態を指すのに対し、滑走障害は層間の密度や粘性、圧の条件で「滑りが悪くなっている」状態を含みます。giversでは、Physical Lock(物理的ロック)とChemical Lock(化学的ロック)の2つの視点から原因を整理し、それぞれに適したアプローチを行います。

Q

ほぐすだけで滑走障害は改善しますか?

A

マッサージやほぐしで一時的に楽になることはありますが、動作のクセや負荷パターンが同じだと戻りやすくなります。giversのアプローチでは、徒手で滑走を作った後に運動で再学習する工程を重視し、「その場の変化」と「戻りにくさ」の両立を目指しています。施術前後に必ず再評価を行い、変化が出たアプローチだけを採用します。

Q

Physical Lock と Chemical Lock の違いは何ですか?

A

Physical Lock(物理的ロック)は筋内圧の上昇により組織間の「押し付け」が増え、滑走が制限される状態です。過緊張や筋スパズムが主な原因で、深い張りや動かすほどの抵抗として感じられます。一方、Chemical Lock(化学的ロック)はヒアルロン酸を含む組織の性状変化で粘性が高まった状態です。不動や循環低下が背景にあり、ベタつきやこわばりとして体感されます。両者は相互に増悪し合う可能性があり、giversではどちらが主因かを評価した上でアプローチを選択します。

Q

滑走障害はどのような症状と関連がありますか?

A

滑走障害は、肩こり・首こり、腰痛、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)、膝の動かしにくさ、スポーツでの可動域制限など、さまざまな症状の背景因子として関与し得ます。身体は結合組織でつながったシステムであるため、一箇所の滑走低下が別の部位への代償動作を引き起こすこともあります。

Q

滑走障害に対するgiversの施術の流れを教えてください

A

giversでは「評価→介入→再評価」の4ステップで施術を行います。①動作評価で引っかかりのパターンを特定し、②局所評価で滑走が破綻している層と運動連鎖を推定します。③徒手と運動を組み合わせて滑走を回復させ、④再評価で同じ動作の変化を確認して最短ルートに調整します。「気持ちいい」より「動きが変わる」ことを重視しています。

注意が必要な症状

強いしびれ、筋力低下、外傷後の腫れや熱感、夜間痛の増悪などがある場合、別の要因が関与していることがあります。無理をせず、必要に応じて医療機関へ相談してください。

参考文献

  1. Sejersted OM, et al. Intramuscular fluid pressure during isometric contraction of human skeletal muscle. J Appl Physiol. 1984.
  2. Sejersted OM. Intramuscular pressures for monitoring different tasks and muscle conditions. 1995(Review)
  3. Challa ST, et al. Muscle microvascular blood flow, oxygenation, pH, and perfusion pressure decrease in simulated acute compartment syndrome. 2017.
  4. Stecco C, et al. Hyaluronan within fascia in the etiology of myofascial pain. Surg Radiol Anat. 2011.
  5. Cowman MK, et al. Viscoelastic Properties of Hyaluronan in Physiological Conditions. 2015.
  6. Stecco A, et al. Densification: Hyaluronan Aggregation in Different Human Organs. 2022.
  7. Okita M, et al. Effects of reduced joint mobility on … and hyaluronan in rat soleus muscle. 2004.
  8. Shah JP, et al. Myofascial Trigger Points Then and Now: A Historical and Scientific Perspective. 2015.
  9. Yucesoy CA, et al. Effects of inter- and extramuscular myofascial force transmission on adjacent synergistic muscles. J Biomech. 2003.

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